「チラシを作ったけど、なんだか見出しが読みにくい…」
それ、“ゲシュタルト崩壊”が原因かもしれません。
今回は、実際に制作したチラシのユーザーテストを通して見えてきた、「読みにくさの正体」とその改善ポイントをご紹介します。特に個人事業主向け支援や公的機関のチラシ制作に関わる方には参考になる実例です。
■ そもそも「ゲシュタルト崩壊」とは?
「ゲシュタルト崩壊(Gestalt Collapse)」とは、同じ文字や図形を繰り返し見たり書いたりしているうちに、意味がわからなくなる現象のことです。
漢字をノートに何度も書いていると「この字、こんな形だったっけ?」と突然混乱する…そんな経験は誰にでもあるはず。
これは脳が全体をパターン認識しようとする一方で、一部の形が強調されたり、バランスが崩れたりすると意味のある構造として見えなくなるために起こります。
■ ゲシュタルト崩壊しやすい漢字一覧
とくに以下のような漢字は、形が単純なため崩壊しやすく、チラシの見出しなどで使う際に注意が必要です。
漢字 | 崩壊しやすい理由 |
---|---|
口 | 四角形のみの構造で意味を見失いやすい |
目 | 四角がただ3つ重なっただけのフォルムな為 |
日 | 四角がただ2つ重なっただけに見える |
田 | ただの模様に見える |
木 | シンプルで左右対称な為 |
人 | シンプルで左右対称な為 |
大 | シンプルで左右対称な為 |
中 | シンプルで左右対称な為 |
川 | 縦線3本が記号的に見えてしまう |
本 | シンプルで左右対称な為 |
■ 実例:見出しの「困った」が崩壊して見えた
今回制作したチラシでは、当初このような見出しを使用していました:

ところが、ユーザーテストを実施したところ、複数の人から「『困』の字が記号に見えて意味が取れない」「なんか違和感がある」といったフィードバックがありました。
じっと見てると、記号みたいに見える・・・
ユーザーW氏
困った、を、お悩みorお悩みごと に変えてはいかがでしょうか?
ユーザーN女史
困の漢字がなんかのアイコンに見えてきまして…
特に「困」という字は、
- 四角(口)の中に「木」が入っており、
- 構造が単純かつ対称で、
- 大きく赤字で強調表示されて
- 全体に対してちょうど真ん中(対象線上)に左右対象の漢字が配置されていたため、
“ただの図形”のように見えてしまう=ゲシュタルト崩壊を引き起こしていたのです。
■ 改善後の見出しと意図
違和感をなくし、読みやすさと共感性を高めるため、以下のように見出しを改善しました

■ チラシや資料で「読みづらさ」を感じたら…
以下のような兆候がある場合、ゲシュタルト崩壊の可能性があります:
- 文字が強調されすぎて「記号のように見える」
- 縦書きが連続するレイアウト
- 左右対称のフォルムのパーツを真ん中に配置する
■ まとめ
「伝わるチラシ」を作るには、文章の意味だけでなく“見た目の認識性”も大切。
特に公共性の高い情報発信や、公的支援のチラシでは「わかりやすさ」「親しみやすさ」「信頼感」のバランスが重要です。
今回のようなユーザーテストの声を反映しながら、「読める・伝わる・行動を起こさせる」デザインを目指していきましょう。